長い間ひとり暮らしで、下半身が動かないのに、おむつ交換や身の回りのお世話のためのヘルパーさんが触ることを許さないNさん(女性)。
今回、生活保護の申請が通り、介護施設に入所された。
入所時。
おむつはもちろんのこと、何か月もお風呂に入ってなく、異臭もすごい状態だった。
とりあえず、初日は女性スタッフ数人がかりでシャワーと更衣を済ませた。
2時間おきのおむつ交換も抵抗が強い上に、濡れたおむつを自分ではずしてしまい、巡回の度、全身ずぶ濡れ…。苦労する日が続いた。
男性介護福祉士Mさん。
「僕の夜勤の時は、失禁、おむつ外し、なくなりましたよ。」との報告。
日常生活でもMさんが関わると、まったく抵抗がなく、いつしか他のスタッフもそのコツをつかんだようです。
Nさんの食事時間の様子を見ていたら、
自分の食事を小皿に少しづつつぎ分け、自分の足元に置いていたそうです。
他のスタッフはあまり気に留めなかったのですが、
Mさんは、夜勤のたびその話をして、自宅にたくさんの猫が来ていたこと、猫にエサをあげることが唯一の楽しみだったこと、猫が心配で早く家に帰りたいことなどをNさんから聞き、Mさんの提案で、フーちゃんとミーちゃんという猫のぬいぐるみが用意され、猫のエサやエサ用の皿などが揃えられました。
Mさんはそれだけではなく、
排尿のタイミングやおむつを外そうとする仕草まで見てくれていたのです。
NさんはMさんの名前を覚えることはできません。
だけど、Mさんのことを忘れることもありません。
認知症のNさんにとって自分のことを理解しようとしてくれたMさん。
そこにいるはずもない猫用の小物を準備し、生活習慣を大切にしてくれたスタッフ。
心は通じますね。
MさんはNさんを認知症の人としてではなく、下半身が不自由な方として接していました。
Mさんはコミュニケーションの達人だと思います。
懐かしく読み返しています。介護って、すごくあったかいですね。看護師として、何度も何度も高い壁にぶつかりますが、このころ、初めての老健で、"プロの介護の心"を学んだ気がします。
看護も、介護も基本は同じ。
利用者さまを…患者様…
ひとりの病気をもつ"人"として接する。お世話させてもらう。
その方の生活習慣は、常識では考えられないかもしれない。けれども、その方にとっては、大切な時間だったのだから。
もう一度。あの頃の自分に返って、奮い起たせよう。
私なりの看護の心を。