ある入居者の方は、普段おとなしく、自ら話しをされる方ではなかった。
ある日「今日は少し疲れているのかな?」と声をかけられた。
「試験があって勉強しているからですかね。あまり勉強をしていなくて・・・。」
としばらく試験の話で盛り上がった。
認知症もあり、きっと今日の会話も忘れてしまうんだろうなと思いながら合格発表の日を伝えて退室した。
しばらく日が経ち、自分の方がそんな会話をしたことを忘れていた。
すると、その方が
「あの試験の発表は、あったんじゃないの?」
と急に話しかけられてきた。
「受かりました」と伝えると両手を上げて
「おめでとう、バンザイ」と言ってくれた。
まさか覚えてくれているとは思ってもみなかったし、私の事を心配し一緒に喜んでくれる。有り難かったし嬉しかった。
その方のカレンダーを見てみると合格発表の日に○がつけてあった。
それを見たとき、涙が溢れて止まらなかった。
入居者の方が、スタッフの心に寄り添ったケアの物語ですね。私は、このケアレシピを読んで、「興味・関心」の重要性を再確認できました。相手が持つ興味や関心事に対して、自分自身も関心を持ち、共通の話題としていく。人間関係を構築する上で大切な関わり方だと思います。
反対に相手に対して興味・関心を示さずに、その場しのぎの会話や、気持ちがこもっていない挨拶など、表面的なコミュニケーションを図ると、豊富な人生経験を持つ高齢者にすぐに見抜かれ、より良い関係性を築き上げることが難しくなるのでしょうね。