特養入所中のAさん。
小柄で物静かで車椅子にちょこんと座っているおばあちゃん。
勤務のたびに毎日挨拶するが、私の名前は覚えていらっしゃらない。
認知症の方である。

そんなAさんは、
現在入所している特養の地域で生まれ、地域の中でずっと過ごしてきた。
特養に入所してしまうとなかなかご家族以外とは会う機会がなくなる。
そこで私は、
Aさんの支援の1つとして、地域に帰る支援事業を行った。

ご家族、自治会、老人会、民生委員の方々。
多くの協力を得て、公民館で再会の場を開催する準備ができた。
Aさんが座れるようソファを用意。いざ出発!

もの静かなAさんが車内から
「あれはAさん家。あれはBさん家。」と話し始められた。

私はその記憶力にびっくりしたがその驚きはまだ序の口。
公民館についてからは、会う人会う人、10人以上の名前を言ってのけた。

特養の中では認知症と位置付けられているAさん。
何事も決めつける、枠にはめることで解釈してはならない。
Aさんの力に改めて驚かされた。