認知症専門棟の夕食後の出来事。
キョロキョロと周囲を見渡し始めたAさん。
表情も曇りがち・・・。
近くで会議をしていた私は、会議を中断し、
「あらっ、こんにちは。どうされました?」と聞くと、

「ちょっと、私のほら・・・あれが盗まれた・・・」
「あの・・ほら」と言いながら両手でジェスチャーをして
「茶・・・茶瓶。私の茶瓶が盗まれた。」と訴えるAさん。

Aさんの目の前は、カウンターテーブルのようになっており、
Aさんの目線からは、茶瓶が見えなかったことで、
何だか不安になった様子。

「茶瓶が盗まれたんですか?それは大変ですね。」
「私がすぐに探してみますね。」(探すふりをする私)
「あっ、ここにありましたよ!見つかって良かったです!!」
「せっかくですので、お茶をどうぞ」

「まぁ、ありがとう。助かったぁ。」

「私はそこで、話し合いをしていますので、何かあったらすぐに教えてくださいね。」

「あなたは、利口ね。」

私の深読みかもしれないが、「利口ね。」という言葉が、
すべてを見透かされているようで、私の胸の深い所まで刺さった。

利口と言われずに利口でありたい。私のこれからの課題だ。




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