入職から3年程経った時のこと。初めて施設間の異動を経験した。
介護という仕事の内容にもようやく慣れ始めた私に衝撃を与えてくれた出来事がある。

異動してきたばかりの私はとにかく引継ぎに手一杯だった。施設が変われば、様々なコトが今まで通りでは済まなくなる。新しい環境に順応することに懸命だった。
そんな私の耳に飛び込んできたまさかの言葉。

「担当を変えてくれ!」

ご利用者が上司の課長に向かって怒っている。
「あの人(私)は何もしてくれない!わかっていない!変えてくれ!」80代という高齢だが認知症も無くしっかりご自分の意思表示をされる方だった。
後からわかることだが、その方は施設のドン(名物おばあさん)だった。私はそんなこともわからずに仕事をしようとしていたのである。

一生懸命だった故に「変えてくれ」という言葉は大きなショックを与えた。しかし、何に一生懸命だったのか?この言葉は、私に大切な気付きをくださった。

介護って。ご利用者に向き合って、それからはじまるのだと思う。
私達の仕事は、人に向かうこと。業務に一生懸命だった私が受け入れてもらえなかったのは必然、、妥協しないあの方だったからこそ、言葉にすることで嫌な思いもされただろうにそれを私に教えてくれたのだと本当に感謝している。

後日談。
なぜ、私を担当として受け入れてくださったのか聞いてみた。
「あなたが車椅子を磨いてくれている姿を見かけた」と。
そんなところ見られてたんだ・・・自分のこと(思い)をわかってくれるってこんなに嬉しい事なんだ!と身に沁みて感じたのである。