『かいごプロフェッショナル』 第四弾は、
みなと医療生活協同組合 あつたの森(愛知県名古屋市)
介護福祉士 下園みゆきさん

彼女と初めて会ったのは、施設内で定期的に実施されている事例検討会。見事なファシリテーションをしてみせた彼女に声をかけると「でも、苦手なんです」と屈託のない笑顔で話してくれたことが強く印象に残っている。その手元にはびっしりと文字の詰まったメモ用紙があった。素直さと芯の強さを魅力に感じさせる彼女には「凛とした」という表現がピッタリだと思っている。

「私」が介護を楽しめているワケ

頑固で気の強い性格がそう思わせるのか、「お姉ちゃんでしょ?」と言われる事が多い私。実は、3人兄弟(兄と姉)の末っ子です。私は、人前に出るのが大の苦手。人見知りなんです。そんな私が、介護という仕事に出会って8年が経ちました。日々出会い、人と触れ合う仕事を今では心から楽しめているそのワケをお話したいと思います。

挨拶はやったもん勝ち

学生の頃は吹奏楽部でサックスを吹いていました。県内でも有数の吹奏楽部で、その環境は厳しいものでした。
特に、礼儀。
その時から染付いているのが、
私の大切にしている考え方 その①~挨拶はやったもん勝ち~。相手に求めるのではなく、先ずは自分から。です。
これは人見知りの強い私だからこそ見つけられた考え方なのかもしれません。

自ら一歩動き出すのって意外と勇気が必要だったりしませんか?誰もやったことの無い新しいことを始めるときや、ルール(マニュアルや仕様)には無い臨機応変なことだとか。意識して見渡してみると施設の中ではそんなことがたくさんあるんです。
例えば、朝の光景。
1階の更衣室でユニフォームに着替え、エレベータで4階(担当フロア)へ。スタッフルームに向かう途中、朝食を終えた数名の利用者さんが、談話スペースのソファに座っている姿が目に入ってきます。
くつろぐ利用者さんの背中を照らす朝日が、あまりにも眩しくて。大きなリュックを背負ったままレースのカーテンを一枚引くと強い日差しが柔らかい光へと変わります。就業時間前で、背中には大きなリュックを背負ったままですが、その光に包まれる姿を見ずにはいられないのです。

-誰かがやるでしょ
-リュックを背負ったまま仕事はダメ 
-まだ業務時間は始まっていない

こんな考え方だってあると思います。人ってたくさんの感情があるので迷うんですよね。考えることは大切なこと。でも、考え過ぎて行動できないのではもったいない。
利用者さんが過ごす時間に安らぎを提供したいと思う。これを叶えるためには躊躇せず一歩が踏み出せるようになりました。

皆が居てくれる

そうそう。
頑固な末っ子という性格が仕事に災いすることもありました。
やり始めたら脇目も振らず一直線。視野の狭さと聞く耳を持たないことがどれだけ仕事に悪影響を与えるのか、しみじみと感じました。
私の大切にしている考え方 その②~皆が居てくれる~。1人ではできない。です。
私にとって4人の家族は当たり前の存在過ぎて。居ることが当たり前。そんな私だからこそ見つけられた考え方。

介護は、たくさんの職種の方々と関わる仕事です。だからといって、専門性に頼って任せっきりになってもいけません。協働・支え合いが重要だと考えています。
フロアの管理者として仕事をさせて頂くようになってから感じたことです。管理者という役割を新しく担っても、介護福祉士という役割は変わりません。今まで通り仕事をしている時。ふと、周りを見渡すと、誰も私についてきてくれていない感覚に襲われたことがあります。孤独で不安で寂しかった。

共に仕事をする関係を築けていなかったんです。利用者さんに向かってだけ仕事をしていた私は、いつしか“周りに支えてくれる人が居るからそれが出来る”ことを見失っていました。それからは、積極的に関わる事から始めました。私よりたくさんの経験を積んでいる方には、素直に頼り教えてもらうこと、助けてもらうこと。後輩には、私が経験から得たものを包み隠さず伝えること。そして何より、フロア全体で笑顔が絶えない雰囲気をつくること。共にする時間を増やしたんです。
今では、振り向いた時。仲間がついてきてくれている実感があります。そんな仲間に感謝する毎日です。

私の大切にしている考え方「本質」。私にとっては「こだわり」に近い言葉。“私が私らしく居ること”や“私だからこそ”個性を活かすって大切なことだと思うんです。
これらは、全て経験に基づくものです。私は経験の中から自分の大切なもの・大切なことを見つけてきました。
「私」を上手く活かすこと、これが楽しさの源なのかもしれません。

好きという感情

最後に。
私の大切にしている考え方 その③~好きという感情~。感覚を大切にする。です。
私が信じて続けていることがあります。「10年。この仕事を続けることが出来たなら、その時心から“私はこの仕事が好きだ”と言おう。」ということ。時間が全てではないと思うけれど、ひとつの節目として考えています。
介護という仕事に興味を持ったのは、姉が介護職に就いていたことがきっかけでした。姉の背を追いかけて始めた介護。大変なことだってたくさんあるけれど、今私は素直に仕事が楽しいです。
そんな仕事に出会うきっかけをつくってくれた姉。両親や兄。友達や仲間に、

「私」は介護が好き!

そんな風に言える日が来ることを楽しみに日々頑張っています。

下園さんありがとうございました!
下園さんが所属するあつたの森さん、ご協力ありがとうございました!

みなと医療生活協同組合 あつたの森(愛知県名古屋市)