『かいごプロフェッショナル』 第五弾は、
医療法人社団 永生会(東京都八王子市)
認知症グループホーム寿限無 施設長
介護福祉士 石井啓輔さん

介護という仕事に対する、熱い思いと揺るぎないこだわり。石井さんとお会いする度に感じること、教えて頂くことはこれに尽きます。そんな想いやこだわりの一部でもけあぴを通じてお届けしたい!筆者の思いを叶えて頂いた。

信念もって諦めなければ必ず実る。

思いを形に。

グループホーム寿限無を開設する時にメンバーと一緒になって考えた理念がある。『その人らしく尊厳を守り ゆったりと安らぎにあふれた 生活ができるよう支援いたします』開設から今までこの理念に背いたことは一度も無い。これからも無い。
どんなことでも同じだと思うけれど、シンプルで心に響くもの。これが一番大切なこと。笑顔のたえない場所って、理屈なく楽しいでしょ。みんなそんな場所に居たいはず。でも、このシンプルをやり続けることが難しい。

結果を出すこと。

いくら熱いことを語っても、いいことやろうとしても、結果が出なければ認められない。
認められるには意味があってね。自分達のやっていることを頑張ってるねって褒めてもらうことじゃない。視点は2つ。ご利用者様に「約束通りの満足」を、協力者(法人内や連携施設、地域の町会等々)に「寿限無は我々にとって必要な存在」を。これらを結果で示す必要がある。
昨今の介護ニーズ増大に伴ってグループホームという存在の認知度も高まりを見せ始めたけれど、開設当時はまだまだ認知度も理解も低かった。兎に角“初めて”取り組むわけだから全てが挑戦。理念に背かないことは何でもやってみたね。
ご利用方針についてご家族と熱く語らせて頂いたこともある。時にはドクターにだって意見を述べさせて頂いたことも。みんな真剣だから熱くなる。「そんなこと無茶だよ・・」「本当に大丈夫・・?」当時はたくさんあったと思う。でも、自分達の思いをしっかりと説明してご理解を頂くことによって、笑顔で寿限無での時間を過ごすご利用者様の姿を叶えてきた。
開設から7年。
開設当時から継続してご利用頂いている方が半数以上。ご利用者様の平均年齢は88歳。
福祉サービス第三者評価(http://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/hyoka/hyokatop.htm)では、寿限無は初めての受審でA評価の満点を頂いた。

1人で出来ることじゃない。

寿限無はたくさんの人に支えられて成り立っている。これは忘れてはならない大切なこと。ご利用者様や地域に支えられるのは勿論のことだけれど、敢えて言いたいのは共に働く仲間のこと。理念をつくるその時から、思いを共にしてくれる仲間が居なければ今は無いと思っている。
施設長としての役割は、理念に沿った活動ができる環境づくり。細かいことを管理する必要なんて無いと思っている、任せる方がいいと。でも、一朝一夕にこれが叶うわけが無くて、築くには“時間をつくる”必要がある。
形をつくる ⇒ 任せる ⇒ 自ら主体的に
はじめはみんなわからないし、出来ることだって少ない。管理者だって同じこと。それをひとつずつ共に積み重ねると実感が湧いてくる。経験はその人を裏切らない。頭で動くのではなくて心で動く、これが重要なことだと思っている。仕事を任せられれば面白い!やってみたら喜んでもらえた!なんて、仕事の中で感じられるように、心を刺激することが出来る管理者が魅力的ではないだろうか。
月日をかけて共に育っていくから面白い。

介護職ってまだまだ知られていないことが多いように思う。当事者もその魅力や専門性に気付けていないのかもしれない。先日痰の吸引実習に出かけた時、院内に大きな声を出して訴えているおばあちゃんが居てね。こっちは勿論誰かが対応するもんだと思って暫く様子を見ていると、誰も近寄らないどころか敢えて放っている様子が伺えた。おばあちゃんのことが気になって「どおした、ばあちゃん?」話しかけてみると、案の定すぐに落ち着きを取り戻した。
私の行動を院内でどう思われたのか定かではない。「また余計なことを・・」「みんなにそんなことしてあげられるほど暇じゃないんだから・・」なんて思う人もいたのかもしれない。
私は、介護職として行動を起こした。そしておばあちゃんに安らぎを与えられたと思う。

介護職の専門性は見えにくい。時に隣に寄り添って、時に共に笑い合って。特に医療職からは意味や意義が見えにくいと言われる事がある。でも、わかってもらえるまでやればいい。ドクターに言われようが、誰に言われようが、信念もってやっていることをやり続けることだ。私はそうやって、認めてもらえる関係を築いてきた。勘違いしてはいけないのは独りよがりとは違う。ご家族とご利用方針を話す時にだって、きちんとメリット、デメリットをわかりやすく説明する。その分野に長けた専門職のアドバイスも聞き入れる。その上で納得して寿限無を選んで頂くことに意味がある。

介護職は専門職である。その専門職としての見解を信念もって伝え続ける。

石井さんありがとうございました!
石井さんが所属する永生会さん、ご協力ありがとうございました!

医療法人社団 永生会(東京都八王子市)