医療法人社団勝優会が運営する、ホスピタルケア白金高輪は港区にある住宅型有料老人ホームです。
今回特集するのは、藤原圭希さん(訪問看護認定看護師)です。

プロフィール
看護師(訪問看護認定看護師)、保健師、介護支援専門員
大学病院勤務、訪問看護管理者を経て現在に至る。

#7 「人間関係を築くこと」

よいケアとはなにか

看護覚え書(フロレンス・ナイチンゲール著)の一節にこうある。”いかに看護をするかを教えようとは思っていない。むしろ自ら学んでもらいたいと願っている”。よい看護師は、知っていることよりも行なえることが求められているのだと感じとった。

筆者は、看護師の新たな学び方を提供する場(看護管理塾:聖路加国際大学 主催)づくりに関わっている。ここでは、経験から学んでいる臨床知(暗黙知)を活きた情報(形式知)に変換していく”看護を物語る”ことを体感する。全国から集まるおよそ60名の参加者が、各々の経験を持ちより語り合うわけだが、ひとつとして同じ出来事は無い。共感できる事柄は多い(これもまた共感的理解に敏感すぎる看護師の特徴でもあるのだが)がしかし、行なわれるあらゆるケアは個別なことなのだ。

さて、「よい」という形容詞はなににかかるのだろうか。
前回に続き、居室を訪ねる藤原さんの姿をみながら感じたケアをお届けする。

専門性は人間関係を築いてから活かすモノ

ご家族と外食中に脳卒中で倒れた方のお部屋にて。清拭、体位変換をしていた時のこと。
「ちらっ!(藤原さん)」毎度のご挨拶。相手が会話できる、できない関係なく藤原さんは声を掛ける。程なくして介護スタッフの方も入室し、必要な情報の共有がはじまる。その後2人の仕事は阿吽の呼吸でテキパキと進められていた。女子3人(ご入居者さんも含め)のやり取りは他愛もない会話にも及んでいた。居室の雰囲気がいい。

「その言葉うれしいわあ!」

介護スタッフさん「○○さんの体位が気になっていて、もっとこうしてあげたいけど。どうしたらいいですかね?」

細かい様子に気付くのは介護スタッフさんの様だった。居室を訪れる頻度が高いのだろう。
排便も頻繁におむつから漏れていたようで「なぜMなんでしょうね。Lが適切かもしれませんね。」と保管されているオムツの大きさについても確認をしていた。
体位変換の作業中だった藤原さんは、介護スタッフさんの言葉を聞くなり「その言葉うれしいわあ!」と返してみせた。
早速、まくらの使い方⇒脚の置き方について説明をはじめた。介護スタッフさんも「うんうん、なるほど」。
一通り終えて居室を出る時には「ありがとう!助かりました!」と声を掛けあう2人。お互いが役割を持って、お互いを必要としている様子がみてとれた。

押し付ける人、受け身な人が居ない

関わる人のそれぞれに見方がある。例えば、看護師の視点(専門性)で考えると○○○が見える、介護スタッフの視点で考えると△△△が見える、ご家族の視点で考えると■■■が見える。お互い違うものが見えているからこそ、ご本人と共に「どうしたら実現したい思いを叶えることにつながるのか」可能性を考える続けることができる。

実はこれが難しい。お互いを認め合えることが前提であるし、職場の空気(規範・暗黙のルール)を健全に保つことが必要である。多数のメンバーによって運営される職場(チーム)では、この”心理的な安全”が確保されているか否かが重要なポイントとなる。
気を付けておきたいことは、安全を感じられないスタッフは情報を止める。ということだ。

居室での仕事を終えエレベーターで下階へ向かう途中、4人ほどのスタッフとすれ違った。「○○さん足が痛いって」みなさんが合言葉のように全く同じことを言う!タイムリーに情報が共有される様子、これはとても興味深いことだった。スタッフルームではこの話でもちきりだったことは言うまでもない。

みなさん安全を感じているのだろう。

今は寝たままの状態であるこのお部屋のご入居者さん。
ご家族の思いは、お母さんに再び口から食べられるようになってもらいたい。ことだとお聴きした。

藤原さんが働く場所

医療法人社団勝優会 ホスピタルケア白金高輪