左半身麻痺があってもスタッフに気を遣い、一生懸命名前を憶えようとしていたYさん。
再び脳梗塞を起こし、右半身も麻痺してしまいました。

若い介護スタッフたちにとって、1番辛かったのは、
言葉がしゃべれなくなって施設に帰ってきたこと。

Yさんは、冗談もよく通じて、Yさんとのおしゃべりを楽しみにしているスタッフも多かったのです。若い介護スタッフたちは、何とかしてYさんともう一度話がしたいと思い、毎日毎日あることを繰り返しました。

きっとリハビリの方や看護師なら、50音順を使っての発語訓練を行ったことでしょう。
しかし、彼らが取った手段は違いました。
2回目の脳梗塞を起こす前、Yさんとだけ、やり取りしていた言葉遊びがあったのです。

「イケメンの…」
「僕の名前は…」
「優しい…」
「担当の…」

言葉の所を投げかける事により、…の部分をYさんが答えます。
表情も硬かったYさんですが、このやり取りを始めてから、1週間くらいで言葉が出始めました!!!若いスタッフたちも嬉しくなり、どんどんやり取りが増えていきます。Yさんにも笑顔が返ってきました。

今頃、楽しい会話をしながら、ケアしてもらっている事でしょう。
若いスタッフのH君が、私ともう一人の介護職の先輩に報告に来ました。介護職の先輩がにやにや笑いながら「うん。やり方としては間違ってない」と言ったのを聞いて、H君がさらに喜んだのは言うまでもありません。
気持ちが通じるケアには、どんなエビデンスも関係なかったみたいですね。