ある日、スタッフからこんな相談がありました。
「認知症のご利用者Aさんが食事の際に箸を使えなくなったので、どうすれば・・・」
スタッフに話を聞くと、Aさんは昨日までは、きちんと箸で食事をしていたとのこと。

スタッフも早急に対応しようと考え、箸がダメなら、スプーンで・・・と、
Aさんにスプーンを渡したが、スプーンを逆さに持てしまい、うまく使えない・・・。
しばらく様子を見ていると、「逆さスプーン1本と箸1本」で、箸の要領で食べる始末。

案の定、箸とスプーンの同時使用は、とても珍しい食べ方のため、周囲の認知症の方々より「使い方が違う!」「そうじゃない!!」と指導の声が飛び交い、Aさんは不安な様子になっており、とにかく、どうにかしてあげたい一心で、スタッフは、一生懸命に箸の説明と使い方の説明をするもののAさんは、思うように箸を使えない・・・。

そんな悩みを聞き、すぐに解決策が見つからないまま、私もAさんの様子を見にいくと、もちろんスタッフの言うとおりの状況・・・。

私は、とりあえず、Aさんのご飯茶碗とお箸と同じものをスタッフに準備してもらい、Aさんの前に行き、「ご一緒によろしいですか?」と声をかけ、一緒に食べることに。

私がAさんの目の前に座り食べ始めて、30秒も経たないうちに、Aさんは、自然と自分の箸を握り、箸のみで当たり前に食べ始めた・・・。

「そっか。」

目で見せて、スピード解決した瞬間でした。めでたし、めでたし。