通所の送迎(帰り)時間になると、
決まって送迎待ちの集団の輪から外れ、
一人、玄関口の目の前まで行かれるAさん。

「まだですよ」「もうちょっとですよ」
「この車が出た後に来る車ですからね」
優しく声をかけるスタッフもいますし、
「玄関口は危ないので、あちらでお待ちください」と
リスク回避重視で集団の輪に戻そうとするスタッフもいます。

送迎待機時のプログラムの充実を図っても
Aさんは決まって、玄関口まで行こうとされる。

そんなある日、玄関口付近にいるAさんと一緒に
送迎車を待ちながら、趣味や日常会話をしながら
サラッと訪ねてみた。

「玄関口で待つと落ち着きますか?」すると、意外な回答が返ってきた。

「私は、外出時には主人と一緒に出ることがほとんどで、
外出先の行動の予定は、すべて主人に任せておりました。
これまでに一人で外に出る機会がなかったんで、独りじゃ怖いんです。
もしかして、私が知らない間に、
取り残されるんじゃないかな・・・って思うんです。」

私は、Aさんのこれまでの生活歴「narrative(ナラティブ:物語)」を聞き、
「そういう事か!」と深く納得しました。

その後、この情報を職員へ周知したことで、
玄関前での声掛けの質が向上したことは言うまでもありません。