介護老人保健施設の入所フロアでの出来事です。
今日は、コミュニケーションが難しい入所者A氏の入浴日でした。
担当ケアスタッフのB氏は、入浴が先が良いか?トイレが先が良いか迷っていました。
実は、入所者のA氏は、浴槽内での排便が認められるからです。
もちろん、浴槽内排便があっても怒りませんし、入浴時間も考慮しているつもりです。
Bさん:「今日は 入浴が先がイイですかね?それともトイレが先ですかね?」
そんなことをつぶやきながらA氏を脱衣所で脱衣介助していると、
先輩ケアスタッフのCさんがこう言いました。
Cさん:「Bさんは、A氏を適切な場所で排泄してほしいんだよね。A氏の尊厳を守りたいもんね。もちろん入浴業務が止まることなく、上手に遂行したい気持ちもあるよね。だったら、もっとA氏を見なきゃね。コミュニケーションが苦手なA氏でもきちんとサインを送ってくれているよ。」
そういうと、Bさんが脱がせたオムツを指差して、こう続けました。
「ちょうど、肛門に当たる部分がうっすら汚れているのが分かる?これって排便したいっていうサインじゃない?」
A氏をトイレに誘導し排泄を促すと、Cさんの言う通り、排泄が認められました。
浴槽に入ってお湯につかれば、体が温まって腸の動きも良くなり便意をもよおす。
人間の体の構造やしくみ、はたらきなど、人をケアするうえで必要な基本的な知識を身につけること。
便がしたい、その表現やサインはその人によっていろいろ。
毎日ケアに携わる私たちだからこそキャッチできるもの。
森全体を俯瞰(ふかん)しつつも、森を構成する1本1本の木の特徴を理解しお世話する。
その反対に、1本1本の木の特徴を理解しお世話する中で、森全体がみえてくることもある。
私たちのケアも、そんなバランスが大切なんだと、このレシピをとおして学ぶことができました。