以前の施設でトラブル続きの方が入居されてきた。プライドが高く、コミュニケーションも難しくスタッフも出来る事ならば避けて通りたい人であった。

それでもスタッフの頑張りもあってか徐々に会話も多くなり、以前の施設より入浴拒否があったが当設ではなくなってきた。大好きな、お寿司を出前してもらって誕生日をお祝いしたり、外出を重ねていくうちに表情も穏やかになられていった。しかし望んではいないことなのだけど労いや感謝の言葉はなく相変わらず苦情と要望ばかりだった。

ある日
「主任さん、こっちに来てください。見てもらいたいものと話しがあります!」と呼ばれた。

「あー、また苦情か。」と思いながら行ってみると新聞を指さしながら

「12面の社説を見て下さい!全くその通りですよ。介護員さんは大変なのに。」と声を荒げて言われた。見てみると「介護の担い手・役割に見合う報酬を」というテーマで認知症に専門性が必要で見合った報酬をと言うこと。人手不足と質を求める割には報酬が低い事が書いてあった。

日頃は口に出されなくても、ちゃんとスタッフのしている事を見ていてくれているんだな。と嬉しく思い「ありがとうございます。」と何度も頭をさげた。そういう私を見て照れくさそうにされていた。