
施設に入職して、ある日の夜のこと。
看取りで夜間に入居者様が息を引き取られたと介護員さんより連絡があり、エンゼルケアの為に出勤した。
お亡くなりになられた方の居室に行ってみると、真冬なのに真夏並みに部屋の温度が高く、本人様も横を向いておられた。
「はぁ?何で?亡くなられているのに何故こんなに部屋を暑くしているの?しかも横を向けてる!」と思い、介護員さんに聞いてみると
「家族が来られてSさんを触られた時に冷たいと悲しいかな、間に合わなかった事を後悔されるかな、横を向いていた方が家族がよく顔がみえるから。」ということだった。
確かに看取りの勉強不足かもしれないし、医療から考えるとあり得ない行為かもしれない。
だけど、
この介護員さんは「人」を見て仕事をしているんだな。優しいなぁ。
と思い叱ることができなかった。
今でも、その時のことを、その介護員さんと笑いながら話すことがある。
ちなみに御家族はその時、体に触れて「お母さん、まだ温かい」と。
目線(視点)の違い。
には、学ぶことが多いです。
看護師と介護員の持つ目線(視点)が、こんなにも違うんですね!
他人・他職種の目線(視点)も勿論違いなのですが、
自らにも違う目線(視点)があることに気付きます。
ある時は、介護福祉士
ある時は、施設責任者
ある時は、二児の父
ある時は、結婚10年目の旦那
ある時は、三人兄弟の次男 等々、キリがありませんね。。。
状況に応じて目線(視点)を上手く活用することが上質なサービスを提供するのでしょうね。
本の紹介
【患者の目線~医療関係者が患者・家族になってわかったこと~】
村上 紀美子さん (編集)
は、目線の違いを綴った興味深い書籍です。是非ご一読ください。

立場が変わればわかること

ご遺体の管理より、美しい外観より、家族の思いを最優先させたが故の行動。
医学書には決して掲載されないエンゼルケアの在り方かも知れませんが、
残された家族を「最も安心させることができるケア」だったのかも知れませんね。
最期の別れに、ご本人のぬくもりを感じることができる。
家族にとっては、納得のケアだったことでしょう。
業務の一部として淡々とした作業的ケアではなく、
誰のためのケアなのかを重視した人道的ケアのように感じました。
今、入居されている方々や、ご家族の年代の方々は未だ「死に目に会う」と、こだわられている方が多いです。しかし人の命の長さは誰にも分かりません。施設ともなれば病院のように色々な機械で看視している訳でもないので、最期のタイミングなんて本当によく分からないのです。(血圧や酸素濃度が低値でも長い方がいる)。そんな中で「死に目に会う」事が叶わないのであれば、ご家族に最期を「受け入れてもらう」為に、私達の日頃の関わりや安心して納得してもらうケアだと思います。