利用者Tさんは、40代で水頭症を発症され自宅でご主人と二人で暮らされていた。

認知症を併発されていたため、コミュニケーションが困難(こちらが言っていることを理解できない、極度の短期記憶障害)であった。
ご主人との二人だけの生活が長かったため、ご主人に対する依存心も強く、なかなかスタッフを受け入れてもらえず。
家に帰りたくてエレベーターに乗ろうとされたりすることもしばしばだった。

尿意、便意もはっきりしておられ、車椅子への移乗も自力でできるが、部屋の場所やトイレの場所、それに加え何のために車椅子に移ったかも忘れ、廊下で泣いている姿もたびたび見られた。
所在の確認。Tさんが何かしたくなり、車椅子で動きはじめた時点で声をかけられるようにするには、どうしたらいいか。
いつも車椅子の整備、点検をしているK君が名乗りを上げました。

さまざまな案が出ます。
その中から、個人のプライバシーの保護や、抑制になっていないかといった視点からの検討、試行が始まりました。

結果、なんと、車椅子のタイヤの中の車輪の中に、かわいい音色の鈴を入れ込んでありました。ご主人も危険がなくなったことや、本人が不安がらなくなったことを喜ばれましたた。

一番驚いたのは、今まで1度も笑顔を見せることがなかったTさんが、鈴の音色が聴こえるたびに笑顔になられることでした。
K君いわく。
これで自分たちもいらいらせず、ある程度耳で見守る形でTさんに関われます。
と嬉しそうでした。