看護師はいつも笑顔で。
患者さんからお願いされたことは嫌な顔せずに、疲れた顔を見せずにお世話しましょう。
と私は教えられ、20年看護師として働かせて頂いていた。

そんな私は、誰よりもケア(介護)が好きで、おむつ交換やトイレ介助なら自信があると思い、介護施設で働き始めました。

私の考えは甘かった。

来る日も来る日も、30人くらいの利用者さんのトイレ介助を、1日5~6回繰り返し、30人くらいのおむつ交換を繰り返し…
きちんとできていて当たり前。
求めてはいないけど、認知症などで感謝の言葉さえ聞けない。
地道なケアが永遠と続く。

時には、壁に便が塗ってあったり、あちこちに放尿されたり、便を投げつけられたり…
だけど、だけど、
一番堪えるのは、認知症とはわかっているけど、
罵倒されたとき。嫌われたと感じたとき。

そんなこんなで疲れ果てた心で笑えなくなった時。
どうしたらいいのでしょうか。

介護のベテランさんたちが教えてくれました。最初は気づきませんでした。

(あれっ、なんでさぼっているんだろうって思いました。)
(だって利用者さんに混じって座っているだけなんですから。)

介護士、Mさんは介護歴3年です。
いつもムードメーカーでお年寄りを笑顔にする天才でした。

でもその日は調子が悪いのか、表情がすぐれません。
それでも笑顔でトイレ介助等を済ませた後、数名のお年寄りの真ん中に座っていました。すぐ隣に座っていた認知症のおばあちゃんが、Mさんの頭をなでています。
言葉はありません。
おばあちゃんはにこにこ笑っているだけです。Mさんはしばらく目を閉じていました。

数分後。

彼はいつもの元気いっぱいの笑顔で利用者さんのお世話を始めました。

それから、半年くらいしてからでしょうか。
多忙極まりない上に、精神的にも追いつめられていた時、
関西弁の100歳のおばあちゃんが私に手招きをしています。

私:「どうされましたか?」と近寄ると、
おばあちゃん:「きつそうな顔してるで、ちょっとここに座って…」
おばちゃんはそういって、私の頭をなでてくれます。
おばあちゃん:「しんどかったんやな。無理しなくていいんだから。がんばってるから。」

そうですね。涙が出ましたね。

介護士、Mさんの気持ちがわかりました。
気を付けて見ていると、徘徊のひどい利用者さんに付き合ったあと、その利用者さんに、肩を揉んでもらっている介護福祉士のIさんや、夜中に急死されたいたたまれなさをかんじた時、夜勤明けなのに、いつまでも帰らず、他の利用者さんの中に混じって座っているMさんがいました。

利用者さんのトイレ介助、おむつ交換。永遠に続く地道な介護。
心が疲れたら、その方がたの横にちょっとだけ寄り添ってみませんか。

私たちの心を癒してくださるのは私たちがお世話している利用者さんですよ。