認知症専門棟のフロアでの出来事。
高度認知症のA氏は、認知症発症後10年が経過し、現在、寝たきり状態となっている。
中核症状による発語障害により、返事を含め、単語を話すことはとても難しい。
発語障害のため、大きなわめき声や、うめき声のように聞こえる発声(喚声)が廊下中に響き渡ることも少なくない。
A氏の周辺症状でもあるこの喚声が引き金となり、他入所者の周辺症状が出現することもあるため、検討会を行った。

Bさん:「どんな時に声を出されているか分析してみよう。」

分析の結果、
①スタッフがA氏の横を通過す時、
②ベッド臥床や車イス座位姿勢が長い時、
③コミュニケーションを図ろうと声をかけた時が特に多いとのことだった。

Cさん:「A氏の残存能力や、A氏が発声するきっかけを考えてみよう。」
検討の結果、視覚機能は十分に残存していることが予測され、発声に関しても、何も理由がなく声を出しているのではなく、何かを訴えたくて呼び止めようとしているのだろうという結論に至った。

Cさん:「日中、車イス座位で過ごされるのであれば、痛みへの対処や、体位変換を訴えているのでは?もしかしたら同じ風景がつかれたのかも・・・。険しい表情でないのであれば、視覚機能を使った回想法をしてみては?」

Bさんは、家族に説明し、昔の思い出が詰まった写真を準備してもらい、拡大印刷し、A氏の居住空間を整備してみました。
結果は大成功!
幼少期の頃の自分の写真や、家族との写真をじっと眺め、落ち着かれていた。

これにより、すべての喚声がなくなったわけではないが、大切な一つのきっかけを見つけた気がする。