施設の中で落ち着きがない認知症のAさん。

毎日、廊下を何十回も往復し、
初対面の人に微笑みながら近づき短い会話を交わす。
申し送り中のナースステーションに入ることもしばしばで、
スタッフが廊下で話していると、
少し離れて不機嫌そうにジーッと見ている。

そんなAさんをいつも見ているスタッフに
どうあってほしいかを尋ねるとは、
 ①落ち着いて、座っていてほしい
 ②グループレクや、集団体操に参加してほしい
 ③みんなの輪の中で過ごしてほしい
と、スタッフ目線の要望ばかりが目立つ。

本人の様子を観察してみると、
声をかけて着座してもらうと、落ち着きがなくなり
歩き廻っている時が最も落ち着いているようにもみえる。

歩く理由がどこかにあるはず・・・。

カルテの情報をすべて洗い出すがヒントなし・・・。
経験豊富なスタッフに尋ねると、
「地元病院の看護婦長をしていた、と家族が言ってた。」とポロリ。

このおかげで、行動の理由が見えてきた。

廊下を何十回も往復→「巡回看護」
初対面の人に微笑みながら近づき短い会話を交わす。→「相談対応」
申し送り中のナースステーションに入る→「会議参加」
廊下での会話を少し離れて不機嫌そうにジーッと見ている。→「職員指導」

Aさんの人生史を紐解くことで、
本人に合った「ぴったり」の仕事をつくり、お任せすることで、
精神的に、皆が落ち着くきっかけの第一歩になった瞬間だった。