配属先の重度認知症の施設では、ご利用者が施設生活を送る中で、様々な工夫を施しています。
例えば、多床室においては、個々の空間をつくるためのカーテンが邪魔にならない一工夫や、棚の上に置いてある諸々(テレビ等)が落ちない様に等、生活を害さぬ様に思考を凝らします。

ある時、ご利用者が火災報知機を押して、警報が鳴ってしまうことがありました。そのご利用者は、廊下にある火災報知機を見ては「押」ボタンを押してしまうのです。何事も無く通り過ぎるのを見守ることから始めましたが、常にそうしているわけにもいかず。眼を話すと警報が響き渡ります。なにか工夫が必要でした。

どのような工夫を施せばよいか。過去の取り組み例など、先輩方にも相談しながら検討を始めました。カーテンを取り付ける案。がしかし、カーテンを「めくりたくなる」ので、失敗。また、「押」ボタンが完全に隠れてしまうのは、防火法に反するので却下。何度も試行錯誤を繰り返し、辿り着いたのは「ペットボトルの底」でした。
ペットボトルの底を1㎝大の厚みに切り取り、それを「押」ボタン上にセロハンテープで張り付けるのです。
そのご利用者は、その後も「押」ボタンを押す行為があるのですが、ボタンがペットボトルの底によって塞がれている為、火災報知機は鳴りません。

ご利用者の個々の行動に合わせた生活空間、活動づくりのための工夫が必要です。過し易い環境を日々つくり続けるために。