『かいごプロフェッショナル』 第9弾は、
マスヤマケアセンター(東京都港区)
介護福祉士、介護支援専門員
十合晋輔さん

昨今イケメン旋風は各所で吹き荒れているが、介護の現場にも確実に吹いている。地域の関係者からも「あ~!あのイケメンね」と口を揃えて聞こえる評判はまさに太鼓判。顔や身なりが良いだけではない、カッコイイは内に秘める熱い思いから滲み出ている。そんな思いについてご紹介したい。

訪問介護に出る前の周到な準備

一日の始まりは持ち物の点検から始まる。十合さんはとにかく現場をひたすら歩きまわる。当事者を知るのは勿論のこと、現場(住環境や生活歴、周辺の方々との関係等)を知ってこそ本当にやるべきことが見えてくる。“介護に携わる者が現場で動けなくてどうする?”現場が基本中の基本であり本質であることを物語るワンフレーズ。既にケアマネージャーの資格も取得しており「僕はスーツを着るようなケアマネージャーにはならない」と、役割に縛られることなく、現場に向き合う姿勢を大切にしている。そんな利用者さんの気持ちを考え続ける彼が考える必要装備一式。

そして身なり。「介護職って大変だ、忙しすぎる、世間では3K(きつい・汚い・危険)なんて言われているけど。自分の心持次第で仕事のやり様は変えられるんだよ。僕は身なりを綺麗にしておくことで、心をつくる。自分の気持ちもすっきりするし、何より相手が感じる印象を少しでもよくしたいからね。」全て私服。出発前、今日のファッションに合う靴選びにも余念がない。

介護職としてのポリシー

ある利用者さんの部屋へ訪ねると、たまに顔を合わす息子さんが居た。「母ちゃん、掃除の兄ちゃんが来たよ。俺は帰るから兄ちゃん、後は頼むよ!」と声を掛けられた。(単純に掃除だけしに来てると思われているんだな・・・)と、自らの仕事が相手にどのように映るのかを知った。多くの介護職が感じていることかもしれないが、介護の仕事は理解され難い。だからといって卑屈になることなんかない。それは、自分の中に確固たるポリシーがあるからだ。
ポリシーとは仕事に向き合う姿勢、その考え方の源泉だ。気持ちの入らない仕事は、単なる業務。だから絶対に介護を業務にしてしまってはならない。
十合さんは「人に興味が湧く」ことが源泉だ。たくさんの人に“楽しい時間を過ごしてもらいたい”その思いを叶えるべく利用者さんと向き合う。まずは、その人のことをもっと知りたいから始まる【生活歴を知る】、そうして得た情報を基に話しかける【話題提供】きっかけづくりだ。そこから互いに関係を築くためのコミュニケーションが始まる【関係構築】。コミュニケーションに課題を感じる介護職も多いけれど、コミュニケーションは手段であって目的ではない。だから、目的のないコミュニケーションは不毛だし相手も嫌がるのは当たり前だという。「こっちは仕事だから関わりを持ちたいと思うのは当たり前のことなんだけれど、相手がそれを受け入れてくれるか。もっといえば関わりたいと思ってくれるかどうかが肝なんだよね。こっちが無機質に対応すれば、利用者さんはすぐにわかる。考えてごらんよ。大切な人との関係を思い返せば簡単にわかりそうなもんだろう?」
この一連の流れ【生活歴を知る】【話題提供】【関係構築】を洞察力と教えてくれた。人に関心を持って生活の中にあるいろいろなヒントを探ることから仕事が始まるのである。

嫌味が無いように

やっぱり利用者さんに喜ばれるって嬉しい。できなかったことがひとつできるようになり、本人に自信が湧いてくる。できなくなることが増える自分に向き合わなければならないって大変なこと。簡単には受け入れられない。そんな心境の最中に「お手伝いします!」は、一見有り難いように見えるけれど、本当は複雑な気持ちがあることを忘れてはならない。だから、「ありがとう」って笑顔で感謝の言葉をかけてもらえる瞬間が本当に嬉しいのだと。
しかし、勘違いしてはならないことがある。それは、感謝の言葉をもらうことが目的ではないということ。介護のプロとして仕事をしているわけだから感謝されるような状態をつくることは当たり前“感謝されてなんぼ“の世界。”なにかしてあげる“って思ったら大間違いなのだ。利用者さんは、人生の大先輩。僕らよりもたくさんの経験をして、たくさんのことを知っている、学ばせてもらうことがたくさんある。限られた時間の中で、関わり合うお互いが前向きになれる様に努めている。
仏陀釈尊は「徳を高める(積み重ねる)」と説く。驕ることなく謙虚な姿勢を忘れないことは、十合さんの仕事に向き合う姿勢そのものだ。

成功体験を積むこと

辛い時もある、不甲斐無く悔しい時もある、そんな時は帰りの車の中でEaglesのデスペラードを大音量にして思いを流す。翌日にはすっきり頭を入れ替えて仕事に臨むのも大切なこと。
利用者さんも人、連携を取り合う他職種も人、人と人が関わり合いながらする仕事だからこそ信頼関係が大切だという。
訪問介護という仕事は、どれだけ在宅で過ごすための環境をつくれるかだと思う。自分一人でそれを成し遂げることなど到底できない。【利用者さんから満足を得られること】⇒【事業所の仲間から認めてもらえること】⇒【関わりのある各事業所から認めてもらえること】⇒【自分自身の励みとなりモチベーションアップ!】。今では難しいケースの相談・依頼が増える様にもなった。毎日大変だけど、嬉しい悲鳴でもある。ひとつできるようになると、次に繋がる。

「僕たち介護の仕事はお年寄りが相手だろ?頑張った結果、自分の思い描く通りにならないことも少なくない。そんな時は自分一人で抱え込むことや自責の念にかられることにならないで欲しい。頑張った自分を少し褒めてあげる、そんな自分への労わりも大切なことだと思ってるんだ。結果はしっかりと受け入れて、また次に向けて精一杯頑張れる様にね。」と語ってくれた。

経験は一歩ずつ着実に自分を成長させてくれる。これは、介護職も利用者さんも同じことが言えると感じた。現場の経験が一番の糧なのだ。
各々ができることを増やせる世の中を実現させる。誰かに必要とされる自分でありたいと願う、そんなひとりひとりの思いを実現する介護の仕事に大いなる可能性を感じた。