医療法人社団勝優会が運営する、ホスピタルケア白金高輪は港区にある住宅型有料老人ホームです。
今回特集するのは、藤原圭希さん(訪問看護認定看護師)です。

プロフィール
看護師(訪問看護認定看護師)、保健師、介護支援専門員
大学病院勤務、訪問看護管理者を経て現在に至る。

#5 「地域で活躍する様子」

在宅とは何か

在宅=自宅と認識されることが多いがそうとは限らない。厚生労働省では下記のように在宅を説明している。
<在宅での療養を行っている患者とは、保険医療機関、介護老人保健施設で療養を行っている患者以外の患者>
つまり、自宅及び入居を可能とした介護サービスを提供する場所が在宅とされる。
今回は、これから施設利用を控えている方との初面談に同行させて頂いたことを取りあげる。これから住宅型有料老人ホームを”在宅=住まい”にしようとする方との貴重な場面。”在宅で働く”とは、活躍できる場がこんなにも広いのか!と実感したことについてお届けしたい。

病室での会話

施設側からは、ケアマネージャーと看護師(藤原さん)の2人。病院側の医療ソーシャルワーカー1人が加わり、入居予定のご本人と4人で会話が始まった。
先ず目に入ってくるのが緊張しているご本人の様子(警戒するような表情!&口数が少ない!)。他愛も無い日常のことを皮切りに話が始まる。

お酒が好きだったけれど数年前から止めていること。病院の近くに住んでいるけれど、1人では不安になってついつい病院に来てしまうこと。普段からトイレは歩いて行けていること。

反応したケアマネージャーはベッドからトイレまでの距離を確認しに行く。片道20メーター程の距離があっただろう。「こんな距離を歩けるのであれば、うちの施設ではおつりが来ますよ」と話しかけると、ご本人も嬉しそうな表情になり場の雰囲気は一気になごんだ。

すると、ご本人から話はじめた。病状のこと。飲んでいる薬のこと。更に「気持ち悪くなる」ことが不安だと話した。
藤原さんは「気持ち悪い」という言葉を理解するために「車酔いの様な気持ち悪さですか?」「胸がムカムカする感じですか?」「食事をした後になりやすいですか?」<どんな程度なのか><箇所は何処なのか><いつ起こるのか>等を具体的に例を挙げて話をすすめた。

難しい言葉を使わず、さりげない会話のやり取りから思いを感じとる。相手を理解しようと努める、ケアマネージャーと看護師がそれぞれに担う絶妙な役割分担が印象的だった。

大田区から港区へ

施設を利用する方々は港区(所在地)の方ばかりではない。今回の方は、大田区で独り暮らしをされていた方だった。
ご本人が語り始めて明らかになったのは”本当の不安”についてだった。それは「お金のこと」と「見知らぬ土地(港区)のこと」だった。港区のイメージ(ここではセレブ感)に生活する姿を描き難かったようである。
藤原さんは新たな場所に馴染むよう、一緒に地域を巡ってみようと提案した。近くにお寺があること、緑が多いこと、散歩するには好条件なこと、そして自身も巡ってみたいと思っている場所があることを話した。

不安をこれから「+(プラス)」に転じる様に、生活の中で希望や楽しみを見つけていくことができるか。ここからが在宅に働く医療・介護職の腕の見せ所なのだと感じる場面であった。わずか20分ほどの病室に、1人の方のこれからの生活について向き合う姿を見た。
これからこの方がどのような生活を送っていくのか注目していきたい。

不安を希望に変えられる仕事

介護サービスを利用する方々は「これから何が起こるのか」「何をしてくれるサービス(施設)なのか」「誰が対応してくれるのか」等、わからないことに不安を抱えることが少なくない。それは理屈だけでなく、「あなたの居場所があること」「これからはわたしたちも一緒に時間を過ごすこと」「できることをひとつずつみつける希望を伝えること」心情的な安心も求めているのだと思う。

筆者は、利用する方々のそんな不安に触れることが先ずもって重要な仕事だと考えている。
「利用する方の思い」不安も希望もひっくるめて、迎え入れるために何ができるのかを考えながら話をする。「施設でできること、できないこと」をわかりやすく生活レベルに落とし込んで、生活のイメージができるように話をする。

今回同行させて頂いたお二人からは、視野の広さと創造力の豊かさを感じた。
在宅で働くとは、場所に縛られることなく、人の生活に携わることなんだと。活躍の舞台は広い!

藤原さんが働く場所

医療法人社団勝優会 ホスピタルケア白金高輪