最近、通所リハを利用されるようになった認知症のAさん。
昼食前になると、「家に帰りたい、家に帰りたい」と訴えはじめました。

新人職員のBさんは、Aさんのそばに寄って行き、一生懸命に説明しています。
「Aさん、今日のお送りは、夕方の16:00です、今帰っても家には誰もいませんよ、そんなことより、もうすぐ食事なので、トイレに行って、手洗いして、あっちのテーブルで昼ご飯に・・・・」 
Bさんの説明に対して、Aさんは決して納得することなく、表情はこわばったまま帰宅を訴えられています。

その様子を見ていた上司のCさんが、二人に近づき、
「Aさん、どうしました?」(Aさんは返事なし)、
「私と一緒に家に電話してみましょうか?」(Aさん「はい。」)

この言葉からAさんの表情が変わりました。

Aさんの気持ちに寄り添い、思いを聞きだし、思いを共感したこと。
例え電話が通じなくても、一緒に自宅へ電話し、思いを解決するための時間を共有したことで、Aさんの帰りたいという真意を引き出すことができました。

「何か大切なご用時があったのでしょう?」帰りたいという訴えの原因は、
「お昼ご飯代が無い」ということでした。

「食事代は、朝、息子の〇〇さんから頂きましたので、安心してください。」
「もっと、早く、お伝えすれば、良かったですね。ご心配おかけしてごめんなさいね。  教えて頂き、ありがとうございます。」

CさんがAさんにそう伝えると、Aさんの表情が緩み、安心して食堂へ向かいました。