私は、認知症について講義・説明をするときには、
脳機能局在の説明をしながら、
「健康な脳」と「病気の脳」について話すことが多い。

正常な脳を知っていると、出現する症状で、
脳の状態が見えることが多いからだ。

「海馬」では「記憶を担当」をしていて・・・・
「頭頂葉」では「空間認知を担当」をしていて・・・

そんなある日、私の研修を定期的に参加している
ケアスタッフの田中さんが、通所リハのご利用者の前で、
脳機能局在について話し始めた。

(田中さん)
「皆さん、こんにちは。今日は、認知症について学び、
 一緒に認知症の予防のゲームをしていきましょう。
まずは、脳の働きを説明します!」

私は、「おやっ!ご利用者に、難しい表現で説明するのでは?」
と不安になりましたが・・・

(田中さん)「皆さん、風呂場って何をするところですか?」
(ご利用者)「体や頭を洗うところ」

(田中さん)「それでは、台所は何をするところですか?」
(ご利用者)「料理をつくるところ」

(田中さん)「寝室って何をするところですか?」
(ご利用者)「寝るところ」

(田中さん)「皆さん、大正解です。お風呂場では体を洗い、
       台所では料理を作り、寝室では寝る。そのように場所によって
       することが違いますよね。台所で体を洗うことはないですもんね。」
(田中さん)「頭も一緒で、脳も場所によって、やる事が決まっているんです。」

私は、この導入の方法を聞き、とても素晴らしいと思いました。
高齢者が想像しやすいように、日常生活の中からヒントを探り、例え話を出す。

私自身も、彼のそんな話を聞きながら、大きくうなづいていました。
「簡単で、分かりやすく、覚えやすい」

説得よりも納得が大事であることを、再確認できた瞬間でした。
田中さん、本当に、素敵でしたよ。ありがとう。