愛する妻に先立たれ、大切に育てた息子様も見送ることとなったAさん。
気持ちの落ち込みは計り知れなかった。
思うように動かない身体と、思うように自制できず過敏になった心を持ったAさん。

Aさんから『もう天国へ行きたい』と言われた。
私には想像することもできないほどの出来事であり、Aさんの気持ちを、ただ聴かせてもらうことしかできなかった。

その日1日、Aさんを観察していた。
すると、『天国へ行きたい』と言っていたAさんは、入浴時間になり浴槽へ入ると、満面の笑みで『極楽、極楽』と言っている。
他にもあった。
デイケアの帰りに寒い外に出ると『中は極楽だったな』と言っている。

どうやらAさんにとっては『天国』と『極楽』は違う場所にあるらしい。
そして、『極楽』は人それぞれ違うらしい。
私たち介護職は神様ではないが、どうやら私たちには『極楽』を創るお手伝いも出来るらしい。

・・・やっぱり介護は素敵な仕事ですね。