陸前高田市では、学校の体育館を避難所としていたが、開設当初は人であふれかえってぶつかり合う状態で混乱した状態であった。そして、水が断水していたためトイレも不衛生な状態であった。避難所ではとりわけ高齢者が置かれている状態は悲惨であった。寒い体育館で静かに横たわっている高齢者が多く見かけられた。そして、次第に生活不活発病や認知症状が悪化する高齢者も多数現れている。

陸前高田市沿岸部は、ほとんどが全壊し、震災当初は認知症被災者も一般の人たちと一緒に避難所に避難した。しかし、避難所で自分の位置や時間が分からなくなり不眠や徘徊、不潔行為、暴言などの周辺症状が出て来て、奇声といった行動が出てどんどん状態が悪化していった。認知症の人は音の刺激に弱いため、避難所の入口付近に居ることは落ち着きを失ってしまう。また、トイレを急がせられるとダメになったり、失禁したりする症状を示すことになる。こうした認知症高齢者には、快の刺激を多くし、気晴らしや話し相手、散歩などを行うことが効果あるとされている。避難者は避難先の都合で短期間のうちに3~4か所を移動する人もいた。こうした移動は、認知症の人にとっては、非常にダメージが高く人と人のつながりを失うことで症状を悪化させる高齢者が多くみられた。

しかし、こうした避難所がある中で、認知症高齢者に配慮した避難所もあった。そこには認知症高齢者の特徴や注意点を理解し、生活支援を行っていた。では認知症高齢者の人にとっての好ましい避難所とは次の特徴が上げられる。

① 避難者が少ない
騒々しさがなく、落ち着いた雰囲気
② 自治会代表がリーダーを務める
顔馴染みがいて、整然と動いている
③ 教室(小部屋)に隔離しない
孤立化しない
④ 子どもが多い
子どもの動きが周囲を和ませる

そして、こうした避難所の実践が、福祉避難所の開設やサポートハウスへと質的に変化していくのである。