A氏は、有料老人ホームを利用しながら、通所リハビリテーションのサービスを受けられている80歳女性です。
昼食前と、昼食後から送迎までの時間帯に、しばしば、帰宅願望が見られます。
ケアスタッフのBさんは、A氏の担当ケアスタッフで、帰ろうとするA氏のことを思い,一生懸命に引き止めようとします。

A氏 :「私は、○○町へ帰ります。」
Bさん:「Aさん、まだ帰れませんよ。」「さっき来たばかりじゃないですか。」「勝手に外に出ないでください!」
「まだ帰らなくていいですよ。」「まだですよ。」「今帰られたら困ります。」
Bさんは、悪気はないものの、言葉や体で動きを止める姿が見られます。

さすがに、先輩ケアスタッフのCさんがBさんをアドバイスしました。
アドバイス① A氏がまだ出来ること(残存能力)を学ぶ
アドバイス② バス停を設置し、送迎バスが出る時間を表示する
アドバイス③ A氏の送迎を担当するケアスタッフは、A氏に自分が運転手であることを伝える
アドバイス④ 帰宅願望の出現の有無に関わらず、A氏への頻繁な声掛けや、コミュニケーションを図る。

A氏の分析結果
短期記憶は障害されているため、繰り返し同じことを説明する必要はあるものの、短い会話の聞き取りはどうにか可能で、時計も読むことができる。周囲の動きに敏感で、複数名が目の前を通過すると目で追い、一緒に行こうと立ち上がろうとします。

バス停を設置したことで、スタッフの送迎時間の説明がしやすくなり、併せて、運転手名刺をA氏にお渡しすることで、安心して待つことが出来るようになりました。
廊下を歩く際には、A氏に声掛けし、わずかな時間だけでもコミュニケーションを図るようにしました。
これにより、A氏は帰宅願望での不安が少なくなり、落ち着時間帯が増えました。